言葉の表裏・北朝鮮の民主主義
日本語の会話で「結構です」というと、普通は「断(ことわ)り」の意思表示である。これが、「たいへん結構です」や「結構ですネ」というと賞賛や同意の意思表示となる。ところで北朝鮮は、国名として朝鮮民主主義人民共和国を標榜(ひょうぼう)している。しかし、現実の同国は、民主主義どころか、恐怖政治を行い、国民の自由を奪い、まるで国全体が監獄であるかのような体制を敷いているように思える。「民主主義」という言葉は、国家体制の偽装表示なのであろうか。それとも、後ろに「人民共和国」が付くと非民主主義という裏の意味になるのであろうか。
北朝鮮は、自国民の通信の自由や移動の自由さえ認めていないのだ。21世紀にもなって、国民の自由な旅行も認めず、国民に対してラジオやテレビなどの自由な受信も認めない国家は異常である。北朝鮮は、なぜ、そこまで国民の自由を奪う必要があるのであろうか。また、なぜ、他国の国民を拉致して、その自由を奪い、拘束を続けているのであろうか。北朝鮮という国家の指導者たちは、何を目的として人びとを不自由な状態に置いているのか、理解に苦しむ。
5年前に北朝鮮から日本に帰還した拉致被害者である地村保志さん夫妻や蓮池薫さん夫妻、曽我ひとみさんなどの話から、北朝鮮による拉致の方法は、生やさしいものではなかったことが明らかになっている。日本でなんらの落ち度もなく平穏に生活をしている人たちを、いきなり殴ったり、袋をかぶせたりして、小船に乗せ、拉致しているのである。当時13歳であった横田めぐみさんも、おそらくそのように袋をかぶせられ、猿轡(さるぐつわ)を噛(かま)まされて拉致されたのであろう。北朝鮮に拉致された被害者の家族会などが、きのう(2007年12月10日)、東京で開いた国際会議で「拉致解決国際連合」を結成したという(新潟日報、または朝日新聞Webサイト←クリック可)。これは、北朝鮮によって拉致された各国の拉致被害者家族らが結束した成果である。
北朝鮮は、世界の中の最貧国であるという。この事実は、早稲田大学国際教養学部教授の重村智計(しげむら・としみつ)氏の著書『今の韓国・北朝鮮がわかる本』〔2007.11.10発行、三笠書房、「知的生きかた文庫」\533(税別)〕に詳しく論述されている。寒さが例年より厳しい今年の冬は、北朝鮮では、凍死者や餓死者がかなりの数で発生するであろう。暖房もなく、食べ物もない中で、寒さに凍え、餓死していく国民の悲惨さを痛ましく思う。北朝鮮の指導者たちは、この地獄のような窮状に対し、何らの反省も呵責(かしゃく)もなく、漫然と手を拱(こまね)いているのであろうか。同じ東アジアに生きる人間として、他国の国民でありながら、その絶望感と無念さを思うと、心痛が走る。北朝鮮は、核武装など完全に放棄し、開かれた国家として、国際社会の中に窮状を訴え、援助を求めていくべきであろう。東アジアの国で北朝鮮という国家の崩壊を望んでいる国などどこにもないのだ。
すなわち、北朝鮮は、開かれた国家となる手始めに、拉致された人びとを早急にその母国に帰還させ、原状回復をはかり、謝罪しなければならない。そして、自国民の基本的人権を認め、それを国家として保障していかなければならない。そうしなければ、北朝鮮は、世界の中の最貧国という窮状と汚名から脱却することは不可能である。
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