「暫定税率」と自律的循環型経済
「暫定」とは、広辞苑に当たると「本式に決定せず、しばらくそれと定めること。臨時の措置」とある。とすると、暫定税率とは、本式決定ではなく、臨時の措置ということになる。ところが、与党・自民党側は、今年3月末で期限が切れる、いわゆるガソリン税の暫定税率をそのまま維持する方針であるという。ガソリンは、この暫定税率により、1リットルあたり約25円の税金が長い年月に渡り上乗せされている。すなわち、企業や消費者は、この上乗せ分の税金を長い年月に渡り、払わされ続けているのだ。
最近の異常な原油高騰の影響で地方の企業や中小企業の中には、原材料高騰により、悲鳴をあげているところが多いと聞く。ここは、いわゆるガソリン税の暫定税率を一度外して、景気刺激策とすべきであろう。経済が失速して、不景気になってからでは遅い。
人体でも企業でも、疲労困憊のテイで、体力が衰弱し過ぎてからでは、回復措置を取ることが困難になる。これは、回復措置という手法の選択肢が少なくなってしまうからだ。まだ、体力が温存されているうちに、景気刺激策という体力増強策をとるべきであろう。これは、弱ってきた体内にビタミン剤やブドウ糖を投与してやるようなものである。この措置を取れるうちに、景気刺激策をとることは、経済という循環型のシステムを円滑に動かすためには、大変重要なことである。いわゆるガゾリン税の暫定税率廃止は、即効性のある景気刺激策となるであろう。
日本も、現在のアメリカのように経済の自律的循環が機能せずに、FRBという組織が人工心肺装置を使い、強制的に血液循環をはかるというような他律的循環型の経済システムに移行することを企図としているのなら、このような景気刺激策はいらない。しかし、日本やEU、その他、経済が健在な国家は、その健在な経済を維持するために外部との接触や干渉があるとしても、これを調和させながら、また、景気刺激策を施行しながら、自律的循環型の経済システムを維持させるべきであろう。ここは、中央銀行である日銀の出番が多いところである。
アメリカ型経済は、兌換紙幣から不換紙幣に移行してから、貨幣流通量(資金供給量)などの政策に矛盾を来たし、レーム・ダック状態に陥っているように思える。まさに危機的状況に思えるのだ。人工心肺装置で延命されている生体は、余命いくばくもない。そのままでは早晩、死に至る。ドルが単なる紙切れにならない内に、日本やEUは、しっかりと世界経済のルールを打ち立てておくべきである。すなわち、自律的で健康な心肺機能をより活性化させる方策を講じ、これを維持発展させるのである。アメリカには暫くの間、ICUの中で安静にしてもらい、酸素吸入や輸液などで体力の回復を図り、自律的心肺機能が作動するまで養生してもらうしかないであろう。また、これにより世界経済は、自律的循環型として持続的に発展することが可能となるであろう。日本における循環型貨幣経済は、江戸時代の貨幣鋳造における金や銀の含有量維持の努力に見られるように、日本の歴史の中でいろいろな教訓を残しながら維持されてきた。この歴史と経験は、アメリカより日本のほうに豊かである。
ところで、与党、自民党側は数日前まで、前述のいわゆるガソリン税の暫定税率を維持しようとして、国会の衆議院決議で多数による強行採決を目論んでいた。しかし、そんなことをしたら、ますます国民から非難を浴び、内閣支持率が低下することになるであろうことは、目に見えていた。その後、与党側が、この強行採決の方針を取り止めたことは、たいへんよかった。野党、民主党側も、今年末で切れる租税特別措置法に定める諸々の案件を全て反対という訳にはいかないのであるから、ここは、しっかりと委員会審議や国会審議を通じて、問題点を煮詰め、妥協点を見出す努力をすべきである。野党、民主党側も、政権担当能力がある政党であると国民に認識されるためには、あまりに不合理な反対姿勢ばかりは押し通せないからである。
与党側が、今後、もし仮に衆議院で強行採決を行い、この暫定税率の廃止という折角の経済刺激策のチャンスを潰した場合には、国民の多くが嫌悪感を抱くであろう。また、強行採決をしたいなら、現在の衆議院の構成に国民の付託があるかどうかを、衆議院選挙を通して確認してからすべきである。すなわち、国会を一度解散して、国民にその信を問うてから、国会で採決すべきである。日本国憲法に定める議会制民主主義の主旨をないがしろにしてはならない。
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