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なぜ、日本が”JAPAN”と呼ばれているか?

 なぜ、「日本(ニホン、またはニッポン)」が、英語で “JAPAN”(ジャパン)と呼ばれているのだろうか。これには、諸説があるようであるが、なるほどと思わせる学説があるので、ここに紹介する。

 それによると、日本語の「元日」や「末日(マツジツ)」、「昨日」、「本日」の漢字「日」の読みである「ジツ」という音が、“JAPAN” の音の源の一部になったというのである。つまり、「日本」と “JAPAN” という発音には、何の脈絡も関係もないと思われがちであるが、実は関係があるというのだ。これは、学説の一つであるが、有力説でもある。我が国名の漢字表記である「日本 」の「日」という漢字を漢和辞典で調べてみると、その訓読みは「ヒ」であるが、音読みには二つあって、漢音の「ジツ」と呉音の「ニチ」がある。

 さて、マルコ・ポーロによって13世紀末頃、その著『東方見聞録』の中で「黄金の国、ジパング」と表現された日本であるが、当時の東南アジアや南アジアの一部では、「日本」という我が国名は、「ニッポン」ではなくて、「ジッポン」と呼ばれていたと言う。つまり、「日」を「ジツ」と読み、「本」を「ポン」と読んで、続けて「ジッポン」と呼ばれていたわけである。「本」が「ポン」であるのは、長い紐(ヒモ)状のものや棒状のもの、例えば川や電柱や鉛筆などを数えるときに「一本(イッポン)、二本(ニホン)、三本(サンボン)・・・」と数えることから、その読みは分かるであろう。なお、「ジパング」の発音の末尾の「ン」は、ラテン語系の語彙(ゴイ)の末尾にくる「ン」と「ング」の区別からは、「ング」に近かったのであろう。そこから「日本(ジッポン)」は、「ジッポング」と転じて、更に「ジパング」と転化した。しかし、厳密に言うと、「ジッポン」も、もしかしたら「ジャッポン」や「ザッポン」、「ザポン」などと発音されていたりして、今の「ジッポン」と書いたカタカナを読んだ場合の発音と違っていたのかも知れない。なぜならば、日本語の発音は、時代とともに変化してきているからである(後述の注※参照)。そして、「ジッポン」は、それより以前から、ヨーロッパ各地の言語に取り入れられていて、それぞれの言語で表記され、また、それぞれの言語表記に基づいて発音されるようになり、英語では、“JAPAN”(ジャパン)、ドイツ語では、“JAPAN”(ヤーパン)、フランス語では、“JAPON”(ジャポン)、そして、スペイン語では、“JAPON”(ハポン)などと表現されるようになったというわけである。

 昔の日本語がどのように発音されていたかは、テープ・レコーダーやDVDなどの録音や記録の装置がなかった当時であるから、はっきりとした記録はない。したがって、この学説は、仮説を立てての検証に基づいている。また、当時の日本語の発音は、推定に基づいている。

 それから、時代はすっと下がるが、昔の日本語の発音を推定させてくれる画期的な記録が日本語の歴史に登場したのだ。それは、マルコ・ポーロの『東方見聞録』の時代から300年以上も後の1603年に刊行された『日葡辞書(ニッポジショ)』である。「日葡(ニッポ)」とは、日本とポルトガルのことである。この辞書は、当時、キリスト教の布教のために日本にやって来ていたイエズス会の宣教師たちと日本人協力者たちによって編纂されたものである。今から400年以上も昔のことである。この辞書が画期的な記録であると言われるのは、表音文字であるアルファベットをベースとするポルトガル語により、日本語の読みが記載されていることから、そこから当時の日本語の発音が推定できるからである。

 この『日葡辞書』の記載から、この頃の我が国名「日本」の読みに、三通りあったことが分かっている。それは、「ニホン」〔注※「(ニフォン)」と発音されていた。また、この当時のハ行音の「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」は、文字としてそう書かれたものが(ファ、フィ、フ、フェ、フォ)と発音されていたことも、この「日葡辞書」から分かっている。〕と「ニッポン」と「ジッポン」である。すなわち、今から400年以上も前のこの頃も、我が国名である「日本」の読みに、現在では既に使われなくなっている「ジッポン」という発音が存在していたのである。

 「日本」と“JAPAN”。これらの読みには、一見、何らの脈絡や関係がないと思われがちであるが、“JAPAN”という発音のルーツを辿ると、実はそこには関係があるのだということには、現在もヨーロッパで使われている大西洋を中心とした世界地図の東の隅、まさにファー・イースト(極東)にある「日本」が、かつて西欧社会の中に認知されていった歴史を考えると、実に感慨深いものがある。

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