自律的マネーの循環と中央銀行
米国の経済は大丈夫か?
「自律」を広辞苑に当たって調べると、その第一義的意味として、「①自分で自分の行為を規制すること。外部からの制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動すること。」とある。各国の中央銀行は、政治からある一定の独立性を保ち、自律的でなければならない。もし、そうでなければ、異常なインフレやスタグフレーション(注※)などで経済恐慌を招来させることになるであろう。〔注※:スタグフレーション(stagflation)とは、スタグネーション(stagnation:景気停滞)とインフレーション(inflation:通貨膨張)の合成語であり、不況下のインフレをいう。この単語を英語で聞いていると「スダグフレーション」と聞こえることがある。〕
ところで、現在のアメリカ経済は、マネーという血流の自律的循環が機能せずに、FRBという組織が他律的に人工心肺装置を使い、強制的に血液循環をはかるというような他律的循環型の経済システムに依存しているように思える。アメリカは、兌換紙幣から不換紙幣に移行してから、貨幣流通量(資金供給量)などの政策に矛盾を来たし、レーム・ダック状態に陥っているように思えるのだ。まさに危機的状況である。アメリカは、サブプライム問題でローンを弁済できない国民が多いからと言って、また、金融機関などが、この問題のあおりを受け、損失を拡大させているからと言って、このまま市中に大量に資金供給を続けていけば、体液(ドルの貨幣価値)が薄まり、回復不可能な極めて重篤な症状に立ち至るであろう。人工心肺装置で延命されている生体は、余命いくばくもない。そのままでは早晩、死に至る。
ドルが単なる紙切れにならない内に、日本やEUは、しっかりと世界経済のルールを打ち立てておくべきである。世界の基軸通貨をドルから円貨やユーロにシフトさせていく必要があるであろう。なぜならば、ドルは今後、為替市場の中で乱高下し過ぎることが予想され、貿易決済通貨や、経済指標や貿易統計などの基準となる通貨には不向きになると考えられるからである。
世界経済は、各国が、自律的で健康な心肺機能をより活性化させる方策を講じ、これを維持発展させていく必要がある。アメリカには暫くの間、ICUの中で安静にしてもらい、酸素吸入や輸液などで体力の回復を図ることが必要である。他律的人工心肺装置の稼動に依存するのではなく、自律的心肺機能が作動するまで加療してもらうのである。すなわち、自立した血液の循環が自律的に動くまで回復を図ってもらう必要がある。これにより世界経済は、健全な自律的循環型として持続的に発展することが可能となるであろう。
日本における循環型貨幣経済は、江戸時代の貨幣鋳造における金や銀の含有量の維持の努力に見られるように、日本の歴史の中でいろいろな教訓を残しながら維持されてきた。この歴史と経験は、アメリカより日本のほうに豊かである。
ここは、日本がしっかりとリーダーシップを発揮し、世界経済をいい方向に導くべきである。そして、ここでは、日本の中央銀行である日本銀行の存在がより重要となり、その活躍する場面が増えるであろう。
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