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歴史とは何か~国際問題と日本

 「歴史とは何か」――― それは「水滴」ではなく、「虹」を観ることだ! これは、渡部昇一教授が、後記(1)の『かくて歴史は始まる(これまでの500年、これからの250年、「逆説の国・日本の世紀を俯瞰する」)』(知的生きかた文庫、三笠書房、1999年)の中で、短いフレーズながら、見事に「歴史」というものの正体を言い当てている言葉である。

 近年、太平洋戦争の敗戦を認めた日本が戦後50年を経たのを契機とするかのように、戦後教育に蔓延した自虐史観とも言える日本の歴史を見直そうと、歴史学者たちが、諸事に造詣が深い分析眼と慧眼により、日本の歴史に関する名著をものしている。

 その中でも、日本の歴史を考えるうえでの参考文献として、前記を含めた次の3冊を挙げたい。これらは、文庫本や新書版であり、廉価であるが、十分に学術書としての参考になる内容を備えているものである

(1)渡部昇一著『かくて歴史は始まる』(知的生きかた文庫、\648(税別)三笠書房、

1999年)

(2)坂本多加雄著『歴史教育を考える』(PHP新書、\657(税別)、PHP研究所、

1998年)

(3)中西輝政著『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』(PHP新書、\740(税別)、PHP研究所、2006年)

 前記(1)は、渡部昇一教授の分かりやすい文章でまとめられているので、頭から素直に読んでいっても十分に理解できる。随所に出てくる歴史上のエピソードは、それぞれの事象に詳しく当たってみたいと誘惑に駆られるほどである。カバーの袖には次の記載がある。もし、書店で新品が入手できないならば、中古品を探してでも手に入れたい一冊である。

 ・歴史は、無数の事実が積み重なったものである。それはあたかも、空に懸かる虹が無数の水滴でできているのに似ている。個々の事実、すなわち「水滴」を観ているだけでは、「大きな虹」としての歴史を捉えることはできない。・・・これまでの500年、これからの250年―――。「二十世紀における日本の意味」が分からずして「二十一世紀・日本」の在り方に確固たる自信は持てないし、これからの日本が進むべき道も見えてこない―――。こうした思いから、日ごろ私の胸の中に鬱積(うっせき)していたものを一挙に吐露し、できあがったのが、本書である。

 前記(2)は、サブタイトルとして、「日本人は歴史を取り戻せるか」とある。坂本多加雄教授の著書である。文章は、論理の展開が明快であり、専門家受けする内容であるが、法律学的な論理の展開に慣れていない人には、頭から読み始めると難解な感じがする。そこで、この本は、終章から読み始めて、第七章、第六章、・・・・第二章、第一章、序章と、逆の順序で章ごとに読むことをお勧めする。そうすれば、この本の言わんとしていることが明快に理解できるであろう。

 前記(3)は、サミュエル・ハンチントン著『文明の衝突と21世紀の日本』(集英社新書、\660(税別) 、集英社、2000年)の巻末に「解題」として『「ハンチントン理論」の衝撃』を著述している中西輝政教授の著作である。政治学者としての慧眼に触れた思いがする。

 これらの文献は、廉価であるうえ、ボリュームも少ないが、それぞれが名著である。初版から既に数年経たものは、最近のデータや状況と違う内容も含まれるが、考え方としては十分参考になる。日本の今を取り巻く安全保障問題や国際間の経済問題などの世界情勢、そして、日本の歴史教育を考えるうえで、ぜひ、読んで参考にしていだだきたいと思う

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