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人間文化と中国の行状

  大分県の高崎山ではニホンザルの群れの生態を誰でもがすぐ近くで観察することができる。以前、ここに行ったとき、猿の世界の生々しい生存競争の有様を見て、人に生まれたことの幸せを思ったことがある。この猿の世界には、マナーやモラルといったものがなく、他の猿が食べている最中のものを、強い猿が平然と奪い取るという行動があちこちで見られ、食事も平穏にできない猿の世界を、まざまざと見せつけられたからである。

  人間の世界は、動物としての長い歴史の中で、食事ぐらい平穏にできるようにマナーやモラルを醸成させてきた。猿には、動物の歴史が人間と同じくらい長くても、これができていない。これが、猿と人間との文化の大きな違いである。

  この「人のものをとってはいけない」ということと、「父母は大事にしなければならない」ということは、共に、人間が生まれてから後天的に学習する内容であるという。生まれながらにしての人間には、猿と同じように、強いものが弱いものの食べ物を平然と奪うという本能があるのであろう。また、子供は大人になるにつれ、両親とも離れ、父母を顧みなくなることになるのであろう。人間の世界では、これをしつけや教育によって社会的に訓練することにより、人の世界のマナーやモラルができあがってきた。

  さて、そこまで考えてくると、中国はなぜ、東シナ海のガス田を日本との国境線の問題となっている位置に開鑿し、領土を侵略しようとしているのであろうか、ということに思いが巡った。

  今、争乱化しているチベットの民族問題も、中国政府がチベット民族のアイデンティティと宗教を否定し、中華文化を強権的に植え付けようとしていることに対する民族の抵抗運動にその淵源がある。もともとは、ポタラ宮殿を中心に栄えていたチベット民族の領地に中国が攻め入り、チベットの地を中国の領土としたことに起因している。現在、ダライラマを始め、多くのチベット民族が、中国の強権的政治による弾圧から逃れ、インドに亡命政府を樹立している。

  現在、北京オリンピックに向けての聖火リレーが通過する世界の先進国の多くで、中国政府に向けられている抗議行動には、中国政府は真摯に目を開き、耳を傾けて、人権弾圧の態度を改めるべきである。人権弾圧に対する世界の目は、中国政府の「国内問題である」や「内政の問題である」という主張が、世界には通用しないことを示している。

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