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日本語の意味を変えてしまう気象庁の怪

 この国のメディアが使う報道用語は、国土交通省の下部組織である気象庁が決めているらしい。これは、7月24日午前0時26分ごろの「真夜中に起きた」岩手県中部地震を、NHK報道はじめ、日本の各メディアが「未明に起きた」と表現していることが不可解なので、調べてみて分かった。

 Akkii は、手元にある日本語辞典(国語辞書等)を調べてみた。しかし、どの一冊として、真夜中の午前0時を過ぎて間もないころを「未明」の意味に挙げているものはなかった。そこで、WEB検索画面で「気象庁、気象用語」と入力して驚いた。何と、この「未明」の意味は、国語を所掌する文部科学省ではなく、気象庁が決めていたのである。

この気象用語は、気象庁では「予報用語」と言うらしい。また、この「未明」の時間区分は、真夜中の午前0時から同3時ごろまでを言うらしい。そして、NHKの報道がこれを気象や地震などに関する報道で使い、それに倣ってか、NHKのその他のニュース報道でも、時間を言う場合にこの「未明」を使っている。また、その他のメディアの報道も「未明」を使っている。例えば、「WTO交渉が日本時間の30日未明に決裂」などのようにである。

 ところで、気象庁が予報でこの「未明」という語彙を使うことになった理由は、「夜半」という語彙が一般に使われていないからだという。しかし、この「夜半」は、それまでの台風予報などでは、頻繁に使われていた語彙である。そして、日本語辞典(国語辞書等)や和英辞典などには、この「夜半」は「真夜中」、「午前0時」の意味として出ている。したがって、日本の言葉として定着し、日本文化に定着していた語彙と言える。ところが、「未明」という語彙は、日本語辞典(国語辞書等)や和英辞典などを調べても、午前0時から同3時ごろまでを指し示す意味としては出ていない。そして、広辞苑には、「夜がまだすっきり明けきらない時」と出ている。そのうえ、和英辞典にも、「夜半」は ”midnight” と出ているが、「未明」は “before dawn” ”before daybreak” と出ているのだ。つまり、和英辞典でも「夜半」は「真夜中」の意味であるが、「未明」は「夜明け前」の意味なのであり、気象庁が言う午前0時から同3時ごろまでの意味は含まない。

 なお、この「未明」の漢字は、辞書を調べるまでもなく、「未だ明けず(いまだあけず)」の意味であろう。これは、日本語を母語とする国民が小学校、中学校で漢字を習っていれば、素直にそう取れるであろう。それは、夜明け前を意味する言葉だ。そして、日本語の辞書にはそうある。また、和英辞典にもそうあるのだ。

 台風のように、ある地点を通過するのに一定の時間がかかる気象状況の場合は、「未明に通過」などとしても、あまり違和感を持たなかった。しかし、地震は1時間も続くことはなく、せいぜい数分間でメインの地震は終わる。したがって、真夜中の午前0時26分ごろ起きた地震をNHK報道で「未明に起きた」と表現されると、何という日本語の使い方だと驚愕の念を禁じ得なかった。当夜、Akkii はこの時間、まだ起きていた。テレビをかけっぱなしにしながら、PCに向かっていた。すると、テレビ画面の上部に地震情報が表示され、間もなく、震度3位の長い地震がやってきた。その地震の揺れを体感しながら、発生地点は遠いようだが、かなり大きな地震がどこかで発生したのだろうと推測した。Akkii は、その夜は未明まで起きていたとは考えていない。それは、「未明」とは、うっすらと朝が明ける前であるという感覚と思いがあるからだ。多くの日本人は、そう思うのではなかろうか。そして、日本語辞典(国語辞書等)や和英辞典には、そう出ている。

 しかし、この報道用語やそこで使われる「語彙の意味」を国土交通省の下部組織である気象庁が決めてしまうとは、この国の言語政策は、一体どうなっているのであろうか。この日本で、従来使われていた伝統的な意味の「未明」という語彙の意味を、国土交通省の下部組織である「気象庁」が変えてしまえるということが、この国の言語政策の脆弱さと希薄さを物語っている。そして、NHKをはじめ、各メディアが、この気象庁が定めた日本語の「語彙の意味」に盲従しているようにみえるのが、たいへん不思議である。

 現在、わが国の報道で使われている「未明」という語彙に代え、「真夜中」を使うか、「夜半」という語彙を復活させて使うべきである。気象庁などに日本で伝統的に使われている言葉の意味を変えさせたり、報道用語を規制させるべきではない。国民が使う言語には、統一的に調査、監視し、指導する国家機関が必要である。先進国の多くは、この機関を持っている。日本にも、この機関を作る必要がある。

 一国の言語政策は、その国の世界戦略や安全保障に関わる重要な事項である。一般に言語には、規則性(または規範性、規律性)、安定性、普遍性(または汎用性)が求められる。国語を所掌する省庁でない国土交通省が、報道用語を決めてしまうなどの安全保障上の重大な危険性は排除しておく必要があるであろう。これは、この国の政治の心もとなさが出ている事象だ。この国の安全保障がまことに危ぶまれる事態である。

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