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マネーゲームと1個1円単位を売上げる実体経済

東京の下町には、「~螺子」とか、「~螺子工業」という名の町工場がたくさんあった。ところが、今ではこれらの町工場は、いろいろな事情で、倒産したり、廃業したり、また、郊外に移転することを余儀なくされたりして、その数を大きく減らしてしまった。

「螺子」とは、「らし」とも読むが、「ねじ」とも読む。つまり、「ネジ」のことである。製造されたネジは、たとえば、直径1ミリメートルで長さ3ミリメートルの小さなネジが、大きさが10センチメートル四方で深さ2センチメートルの、厚紙の箱に3万個入れられて、1個1円20銭で計3万6千円、などの値段で取引きされていた。これは、実体的経済の中で製造業として日本の工業を支えた中小零細企業の話である。しかし、今でもネジ製造を続けている事業者の話でもあるのだ。

つまり、現在もネジの製造をしている螺子工業には、1個1円単位のネジを製造しているところもあるのだ。これは、大手の電子機器製造会社に勤めている友人から聞いた話だが、以前は、1個が1円未満で、何十何銭という単価のネジの納入もあったという。しかし、さすがに最近では、単価1円未満のネジはなくなり、最低でも単価は1円になったそうだ。

ところで、この1個1円単位のネジを造る製造業が経済活動している実体経済と同じ土俵で、また、同じ貨幣単位で計算される市場経済の中で、マネーゲームで何億円、何兆円単位のバブルを煽ってその暴利を貪ってきた金融資本主義のもとの利益集団があるのだ。そして、そのバブルがはじけて大きな損失にあえぐその利益集団と共に、瓦解していく金融資本主義があるのだ。この金融資本主義には自己規律性がなかった。そこにはモラルハザードが容認されていた。

今、欧米の各国では、マネーゲームによる損失があまりにも大きいということで、その損失を政府が面倒みなければ、実体経済にもマイナスの影響を与えるということが喧伝(けんでん)されている。そして、金融機関などの不良債権を政府が買い上げることの是非が問題となっている。そこには、自己規律性がなかった金融資本主義のモラルハザードを宥恕していいのかどうかの議論があるのだ。

現在の世界経済は、マネーゲームで膨らんだバブルによるマネーがあふれている。このバブルを終息させなければ、実体経済は、架空経済の下敷きにされ、マネーゲームの草刈場(入会地)とされて、健全な循環型経済は機能しないであろう。

米国発のバブル崩壊による世界の金融危機は、金融資本主義のもとで、金融機関などが、自ら参入していたマネーゲームの決済資金に逼迫したことに大きな原因がある。したがって、資金繰りが逼迫している金融機関などでは、それを信用収縮と呼ぼうが呼ぶまいが、他者に貸出す資金を手当てするどころではない。

今、このようなマネーゲームを正当化させてきた、自己規律性を持たない金融資本主義は、終焉の時を迎えているといえよう。この終焉の時を、いたずらに先に延ばすべきではないのだ。ここは一気に膿(うみ)を出し、経済の健全さを取り戻す、またとないチャンスである。

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