ドリアンは落果か落下
フルーツの王様といわれるドリアンが道路に落ちていた。場所は、マレーシア、ペナン島北西部の道路。熱帯フルーツ・ファームの近くだ。道路の上を覆う熱帯性の樹木の中には、ドリアンの木々も多い。ドリアンの実も重そうにぶら下がっているのが見える。
ドリアンが落下していた位置から通り過ぎてしまったレンタカーをバックさせて、ドリアンを拾い上げた。適度に熟した、適当な大きさのドリアンである。もしかしたら、荷台につけた木箱にドリアンを満載したバイクが通っていったので、その荷台から落下したのかも知れない。また、もしかしたら、道路を覆うドリアンの木から、熟して自然に落果したのかも知れない。付近には、白茶けて萎(しぼ)んだドリアンが数個、転がっていた。
「落果」か「落下」。いずれにしても落ちていたのだ。車内に収納したら凄い臭いだ。慌てて持っていたレジ袋を二枚重ねにして、その中に入れ、袋の口を縛った。ところがドリアンは、その固い果皮のトゲトゲで簡単に二重のレジ袋を突き破ってしまうのだった。トランクに収納しなおして、安宿のホテルに急いだ。
普通のホテルにドリアンを持ち込むことは、厳禁。ご法度である。これを破れば、損害賠償ものである。その臭気が強く、部屋の隅々にまで立ち込め、なかなか消えないからだ。でも、地元の人も泊まる安宿は例外なのだろう。市場でドリアンは、普段に売っているのだから。
その臭いをとがめられることもなく、夜中に浴室で、持参していたアーミーナイフでドリアンを解体し、食べてしまった。食べると、その強烈な臭いは苦にならない。凄く美味い。さすが熱帯が育んだフルーツの王様だ。
口直しにワインを少し飲んだ。しかし、ドリアンとアルコールの取り合わせは、厳禁であることが、その後に分かった。体内で発酵し、命取りになることもあるという。後の祭りであったが、幸いにも体調には何事もなかった。
毎日、未明に、ホテルの近くにゴミ収集車がやって来るのを知っていたので、ドリアンの残骸はその収集場所に出しておいた。
暗い内から、イスラム教寺院の高楼にあるラウドスピーカーから、コーランを唱えましょうという大音量のアザーンの声が聞こえてくる。この安宿の窓は、遮音効果がほとんどなく、その大音量が部屋の中にまで進入し、毎日未明に目が覚めてしまう。それと前後して、ゴミ収集車の音が聞こえ、暗い内から、道にあふれたゴミを収集していくのだ。
朝になったら、すがすがしい天空の淵に、太陽が熱くギラギラと輝いていた。ここは南国、熱帯なのだ。
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