トヨタ自動車相談役の暴言と対極の「コラム」
厚生労働省が所管する年金記録問題などへのメディアの批判や追及は、国民の「知る権利」に大いに貢献している。
ところが、メディアの報道によると、トヨタ自動車相談役、奥田碩氏が12日、「あれだけ厚労省がたたかれるのは、ちょっと異常な話。正直言って、私はマスコミに対して報復でもしてやろうかと(思う)。スポンサーを引くとか」と発言したという。これは、首相官邸で開かれた有識者懇談会とされる「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の席上であったという。
こんな暴言が、日本を代表する一流自動車メーカーの相談役から飛び出すのには恐れ入った。マスコミを敵に回して、トヨタ自動車には宣伝効果があるのであろうか。奥田氏は日本経団連会長を歴任し、現在その名誉会長にも就任している。しかしこれは、一流自動車メーカー、トヨタ自動車の役員であることから選任されているのではないか。
ここに奥田碩氏と対極の意見を表明した森永卓郎氏の日経BPnetのSAFETY JAPANのコラムがあるので紹介する。タイトルは、「第159回 メディアは年金改ざん問題をもっと追及すべき」である。ここでも指摘されているように、年金改ざん問題は年金記録問題とは違って、重罪だ。著者の森永卓郎氏は、大学教授でもあり、経済アナリストとしても活躍している。
厚生労働省に対するメディアの批判は、理由のない批判ではない。厚労省に対しては、前述の森永卓郎氏が指摘する年金改ざん問題を始め、年金記録や薬害肝炎、産科医不足、労働者派遣の問題などの一連の不祥事や不手際がメディアに批判され、追及されているのだ。これらの批判は、国民世論としても当然の批判として受け取られている内容だ。そして、メディアは「国民の知る権利」に大いに貢献している。
それをマスコミの対応が悪いと言って、「報復でもしてやろうか」とは、お門違いもはなはだしい。これでは、メディアに対する恫喝ではないか。そして、結果として「国民に知らせるな」と言っていると同じではないか。このような資質の人が座長として関与しているとは、何ともお寒い「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」であるように思えるのだ。
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