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国産ジェット機初飛行

新聞の見出しに「国産ジェット機初飛行」とあった。2008年11月29日の日本経済新聞の朝刊第13版、第7面の小さな記事である。

これは、日本製ジェット機の初飛行の記事かと思ったら、中国でのことであった。中国が国産技術で開発した中小型ジェット旅客機「ARJ21-700」が11月28日、上海で約1時間の初飛行に成功したという。

このARJは、昨年12月に第1号機の組み立てが完了したという。そして、そのジェット旅客機は、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)系の航空機リース会社を含め、内外から208機の受注を得ているという。

ところで、日本製のジェット旅客機は、いったいどうなっているのだろうか。MRJという三菱重工業製のジェット機の製造は進んでいるのだろうか。いろいろな切り崩しに合って、製造が遅れているのではないか、と懸念される。

そして、なぜ、日本は国家的事業として国産旅客機の製造を推進しないのか、非常に不思議である。MRJに搭載するエンジンも外国製である。この旅客機の心臓部ともいえるエンジンをなぜ外国製に依存するのかも不思議である。

これでは、日本製の自動車を製造するのに外国で開発された外国製のエンジンを使用するようなものである。ジェット機のエンジンの製造技術は、既に基本特許が時効となり、一般に利用できる汎用技術となっているはずである。国産のジェットエンジンを開発しようと思えば、開発できる環境にあるはずである。

技術立国の日本が、なぜ、こうも航空機産業には消極的なのだろうか。ここには、世界的に省エネルギー型の安全なジェット旅客機の需要が大きいにもかかわらず、国家として航空機産業を育成しようという意欲が全く感じられない。

米国発の金融危機の影響で低迷する世界経済の現況は、トヨタやホンダや日産の自動車が、いかに世界中で売れたとしても、日本をはじめ、世界は豊かにならないことを、はっきり示している。

この世界的不況で、ビッグ・スリーといわれる米国の自動車会社が存亡の危機に陥っている。これは再び、日本の自動車会社の安売りが米国の自動車産業を不況にさせているという米国世論に結びつく恐れがあるのではないか。日本の自動車会社の賃金は、米国のそれよりも安いと喧伝されているからである。

日本の自動車産業は、内需にも不安定要素を撒き散らし、日本の工業技術を陰で支えてきた中小零細の製造業に犠牲を強いて、倒産の危機に陥れ、これらの事業者が持つ技術の伝承すら危うくしている。そのうえ、安い賃金の労働者を求めて非正規社員(非正規労働者)の数を増大させ、国民の安定雇用の場をかく乱させてきた。

そのうえ、自動車の需要は、世界の天然資源を食い尽くす恐れがある。このまま、中国やインドで自動車の需要が増え、先進各国並に自動車が普及したとしたら、世界の天然資源はもたないであろう。また、自動車数の増大は、大量の温暖化ガスを排出させ、地球的規模で悪影響を与えるであろう。これは、容易に推測できる近い将来の危機である。

日本政府は、内需拡大を図る政策を速やかに実施し、国内産業の再構築を図る必要がある。その内需拡大とは、労働者に働く場を提供し、妥当な賃金を支払い、その賃金が国内での購買力を増大させ、それが内需拡大に結びつくという持続的な循環に導くことである。

ここには、産業界や経済界とは違った意見にもとづき、政策立案しなければならない場面が多いであろう。そしてここには、リーダーシップを発揮して、政策立案とその遂行を強力に推し進める政治のリーダー、つまり、有能な総理大臣が必要である。日本に航空機産業という新しい工業が発展することを切に望みたい。

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