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海外にロング・ステイする人たちの意識と行動

 ロング・ステイヤー(long stayer)とは、ロング・ステイする人、つまり、長期に滞在する人のことである。海外旅行でこの言葉が使われる場合は、海外に長期滞在する人のことを指す。ロング・ステイの概念はまちまちであるが、一般に2週間を超えて滞在する場合をロング・ステイと言っているようである。

  最近、海外で生活したいと考えている中高年者が多いと聞く。この人たちの中には、ロング・ステイというよりも、5年間とか10年間とかの長期間のビザをとって、移住したいと考えている人もいるようだ。この人たちのその欲求の背景には何があるのであろうか。不思議なのでそれを探ってみた。

  日本人で、駐在経験などで海外生活の長い人たちや海外旅行をたくさん経験している人たちの意見を聞くと、やはり日本が一番住みやすいという人が多い。Akkiiも、日本が一番住みやすいと思っている。 

  それは、日本での生活は、衛生的で安全であるし、社会的インフラも整っていて便利であるからだ。水も水道水が飲めるし、空気もきれいで、その他の環境もきれいである。また、治安も最近悪くなったというが、海外のいろいろな国と比較してみれば、治安はいい方である。銀行や貴金属店の入り口に自動小銃を構えた警備員なんていない。以下は、タイとマレーシアを中心に、Akkiiiの実体験を交えての論評である。

  タイやマレーシアが比較的治安が良いと言っても、このような警備員の配置が必要なほど、日本と比較すれば治安は良くない。窃盗やスリの発生率は日本の比ではないであろう。建物のベランダを見れば分かるが、オープン・エアの空間は、金網や鉄格子、アクリル板などで、外からの侵入者が入れないように厳重に仕切られ、防御されている。これは、ソウルや香港などでも同じだ。

  ロング・ステイヤー向けのコンドミニアムの紹介のパンフレットを見ると、24時間警備員常駐で安全である旨の説明があったりするが、銃器を携行した警備員を配置した集合住宅が多いのだ。これほど、治安は良くないということなのだ。

また、パンフレットにはプール付きでフィットネス・ジムがあるなどと記載されているが、プールで泳いでいる人はほとんどいない。また、日本人には、衆目を集める屋外プールでは恥ずかしくて泳げないであろう。フィットネス・クラブなら、Akkiiも会員登録しているが、日本の方が衛生的で設備もいい。

  それでも、このような海外で生活したいという意識の背景には何があるのであろうか。それは、日本は物価が高いので、安い海外で生活すれば、経済的に楽に暮らせて贅沢できるという幻想を抱いているからではないだろうか・・・。

  確かにゴルフをするのには料金は安いし、現地並みの食生活に甘んじようと思えば、食費も安くて済む。これは、現地のフードコートや屋台で食事をした場合には、そうであろう。しかし、日本食を食べようとしたら、日本食レストランの料金は高いし、日本の食材を現地のスーパーで買い求めようとしたら、普通は日本の2倍から3倍の値段である。

  交通の利便性を考え、マイカーを持とうとしたら、税金はベラボーに高いし、交通マナーが悪く、日本でゴールド免許を保持していた人でも、ここで安全運転に徹するには相当の困難があるであろう。 割り込み、追い抜き、暴走など、周りの交通は、日本の常識をはるかに逸脱しているのだ。

  それならば、公共交通機関を利用すればいいだろうと思う人もいるかも知れない。ところが、バスのドライバーは平気でタバコを燻(くゆ)らせながら、吸い終わったタバコは平然と窓の外にポイ捨てはするわ、窓の外につばきは吐くわ、である。乗客がバスのステップに乗ったか乗らないうちに、ドアも閉めずにバスを発車させるのは当たり前。

  旅客を乗せていての急ブレーキ、急発進は、日本で第二種免許を所持しているドライバーなら、やむ得ない場合以外はご法度であろうが、これもお構いなしで、日常的である。坂道のヘアピンカーブでも減速することなく、乗客は遠心力で右に左に激しく振られ、いすの背もたれや肘掛に掴まっていないと、振り飛ばされて乗っていられない。

荷物が車内に転がって、あちこち移動してもお構いなし。日本では、荷物を運ぶトラックの運転手だって、絶対にこんな乱暴な運転はしないだろう、と思われるほどである。これは、マレーシアの有名リゾート地、キャメロン・ハイランドの長い坂道での経験だ。

  主要観光地では英語が通じることは多いが、バスのドライバーには、ほとんど英語が通じない。あらかじめ降車場所をドライバーに伝えていても、降車するためのボタンを押すとか、ワイヤーを引っ張るとかの操作をしないと降車場所でバスを停めてくれない。気が付いてクレームを言っても、知らんぷりだ。

  タクシーのドライバーは、混雑している地域に行きたがらない。渋滞している地域の手前で乗車拒否どころか、客をのせたまま運行中止である。そして、タクシー代はけんか腰で請求してくる。また、道を間違えた振りをしたり、知らない振りをしたりして、遠回りするのは日常茶飯事である。その上、タクシーの距離メーターは信用できない。

 

   また、日本に比べ、娯楽も少ない。特に日本の高齢者はテレビ鑑賞が娯楽の1番であるという統計があるが、これらの国では日本語のテレビ放送は皆無であると言ってもいい。テレビは現地語の放送に中国語や英語の放送が一部あるだけであるのが一般だ。なお、日本語のテレビ放送があるとすると、高級ホテルでNHKのニュース中心の海外向け放送が数時間放送されるくらいである。

   そして、コンドミニアムやマンションでは、ペットを飼うことも難しい。マレーシアは、イスラム教国であるから、アルコールはご法度なので、政策的に酒税を高く設定している。そのため酒類の価格が高い。また、宗教柄、犬を嫌う。街で犬を見かけることはほとんどない。タイは、犬が路上に放し飼いでうろうろして、糞がいたるところに落ちているが、犬に手を差し伸べたり、シッポを踏みつけたら、噛み付かれる恐れがある。そして、狂犬病が怖い。   

  これらの現実の海外事情を無視して現地に滞在し始め、現地の生活に馴染めずにいる人たちが多い。そこで現地の日本人ロング・ステイヤー同士で集まり、お互いに困りごとを解決するために協力するという尊い目的の名のもとにコミュニティーを作ったりしている。しかし、これをビジネスと考える人も出てきて、現地では弱者の立場の日本人をターゲットに利益を貪(むさぼ)ろうというビジネスが栄える。

  セカンド・ライフ・ビザやリタイアメント・ビザなどと呼ばれる長期滞在ビザの代行申請費用やコンドミニアムの賃貸料金や売買価額などは、日本人が営んだり、斡旋したりしている日本人向けの事業者に依頼したら費用や価額がベラボーであったりする。現地の相場を狂わせ、高騰させる結果を招いている構図がそこにはあるようだ。その結果、現地の日本人同士の確執や恨みつらみが起き、現地の日本人コミュニティーに亀裂が走るようになったりする。

このようなリスキーで不安定な社会に、日本での快適で安全な生活を捨ててまで入って行こうとするのは、冒険心を満足させ、日常とは違う生活を試みるという「海外旅行」という目的である、というのならば賛同できるし、理解できる。この「海外旅行」のロング・ステイなら大手旅行会社でも募集しているし、Akkiiも暇と金があれば、また、条件が許せば、この程度のロング・ステイなら、時々してみたいと思う。

しかし、現地の生活費が安いから贅沢な生活ができるだろう、などという幻想を抱いて、ロング・ステイをし出せば、必ず後悔することになるであろうから賛同できない。それは、タイやマレーシアの物価も年々上昇し、日本人が現地で、夫婦2人で賃貸のコンドミニアムを借りて満足に生活しようとすれば月々20万円はかかるとも言われているからである。また、現地での生活を途中で投げ出して日本に帰ってきたら、かえって費用が高くかかるであろうからである。    

快適な日本での生活環境は、金には代えられない日本人の貴重な財産なのだ。そして、世界には、日本に密入国してまで、また、不法滞在してまで、快適で安全な、そしてインフラが整っている便利なこの日本で生活したいと考えている人が多いのだ。

今、これらの国で、月5万円とか6万円で快適な生活できますよ、などの宣伝ビデオや案内本が出回っているようであるが、これは日本人を現地に引き入れるための宣伝であり、実際ではない。これらを信じて、海外にコンドミニアムを買い求めたりして、引くに引けないで困っている人が多いのではないかと思う。

  日本の都会の雑踏がいやで、住居費の高いのがいやなのだという人は、日本の田舎に移住することを検討してみたらどうだろうか。田舎暮らしもいいものである。これから海外ロングステイしたり、海外移住したりしようとする人は、この辺をじっくり考え、海外の現地情報を十分に把握し、検討してからにした方がいいであろう。老婆心、いや、老爺心ながら・・・。

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