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チグハグな日本政府の防疫態勢

国家の安全保障政策は、外国からの武力攻撃に対する防御や自衛の対策をすることばかりではない。パンデミック・フルー対策も、その重要項目の一つだ。

日本には、新型の豚インフルエンザに感染し、重症化した豚の豚肉と伴に、新型インフルエンザ・ウイルスが、輸入され、国内に持ち込まれる危険性がある。疫学的に考えて、豚インフルエンザに感染している豚が輸入されたら、一緒に新型ウイルスも輸入される危険性があるのである。これは、否定しようがない。

現在、メキシコやカナダなどの養豚場で、大量の豚が豚インフルエンザに感染し、多くの豚が発症している。そして、それが人間にも感染し、重症例や死亡例まで報告されているのだ。しかし、日本は、これらの国々からの豚肉の輸入をし続けている。どうしてなのだろうか。日本のパンデミック・フルー対策は、一体どうなっているのだろうか。危機管理に甘いのではないか。

 世界には、この豚インフルエンザ感染地域のメキシコやカナダ、アメリカなどからの豚肉や豚肉製品などの輸入禁止措置をとった国家がある。中国やロシア、インドネシア、タイ、アラブ首長国連邦、クロアチアなどである。これらの国々は、国家の安全保障対策の一環とし、パンデミック・フルー対策をしていると見ることができるであろう。

 ところが日本政府は、豚肉は、調理する際によく過熱するものであるから、豚肉から新型インフルエンザに感染することはない、としている。そして、インフルエンザに感染しても、血液にウイルスが侵入することはない、というような医学的知見を否定するかのような見解まで述べているのである。

しかし、新型の豚インフルエンザで重症化した豚は、その体液にまで、濃厚に新型インフルエンザ・ウイルスが侵入している蓋然性が高いのだ。(日本赤十字社は、きのう、新型インフルエンザ・ウイルスが未知のものであり、血液にウイルスが混入するかどうかが不明であることを理由に、インフルエンザ感染者からの献血を受け付けないことを発表した。)

そして現在、新型インフルエンザで重症化した豚が解体され、その体液に、つまり、リンパ液や血液などに、新型インフルエンザ・ウイルスがはびこってしまった豚肉が、輸入豚肉として、日本のスーパーや飲食店や家庭に運び込まれ、そこで、精肉とされたり、調理されたりしている可能性が大きいのだ。これが感染経路となるリスクが大きい。

 高温で加熱し、調理すれば豚肉のインフルエンザ・ウイルスは、死滅するだろう。しかし、豚の生肉を調理する過程では、当然、料理する人の手指に豚の体液が直接触れ、まな板や包丁、布巾などにもそれが付着する可能性がある。そこから、人に豚インフルエンザが感染するリスクは極めて高いのだ。豚の体液とは、血液やリンパ液などであるが、スーパーの店頭で販売されているスチロール・バットに入れられた豚肉のドリップにも、その体液が混入している。

 こうした新型インフルエンザ感染で重症化した1頭の豚が、精肉とされ、それが飲食店や家庭に運び込まれた場合には、そこからの新型インフルエンザ感染のリスクは極めて高い。そして、それは、同時多発的に、広い範囲で感染ルートになる可能性が大きいのだ。

 現在、大阪や兵庫などで広がっている新型インフルエンザ感染は、最初の感染ルートが、ナゾとなっている。広い範囲に急激に広がっているからである。しかし、推論であるが、輸入豚肉が感染源となった場合には、その感染の広がりが、合理的に説明できるのだ。

だとすれば、そこには、空港などでの水際検疫で感染ルートを遮断しても、国内に大きな感染源があるという、底の抜けたバケツで水をすくっているような、チグハクさがあるのではないだろうか。それは、日本政府のチグハグな防疫態勢ということができるだろう。

 最初は、メキシコで豚から人に感染したといわれるこの新型の豚インフルエンザが、人から大量の豚に感染した可能性が大きいことがカナダから報道されている。それは、メキシコを旅行していたカナダの養豚場の従業員が、カナダ帰国後に、その養豚場の大量の豚に新型の豚インフルエンザが発症したのだという。そして、その養豚場の豚は、全頭が殺処分され、養豚場は閉鎖されたという。

 豚から人、人から人、そして、人から豚へとこの新型インフルエンザ・ウイルスは、感染を繰り返すうちに、強毒型に変異する可能性があるのだ。そして、現在使用されている抗インフルエンザ・ウイルス剤のタミフルやリレンザに耐性を持つという危険性すらあるのだ。

 そして、日本の養豚場にこの新型の豚インフルエンザの類が及んだ場合には、養豚業に甚大な被害を与えることになるであろう。

 日本政府は、輸入豚肉から新型インフルエンザに感染する危険性を国民に周知させ、早急に、豚インフルエンザの感染が拡大している地域からの豚肉の輸入禁止措置をとるべきである。

 これは、これは企業の経済活動の利害よりも優先される国家の安全保障政策、つまり、パンデミック・フルー対策なのだ。

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