異文化の様相(1) 公衆便所・その5
東南アジアなどの国々の水道ホースや水桶に溜め込んだ水で用を足した後に洗浄する方式のトイレは、床が水浸しになっていることが多い。便器は日本の和式と同様に平型で、それを跨ぐ方式である。このタイプで紙を使わずに水を使う訳だから、水は外にこぼれ、周りがビショビショに濡れてしまうのは仕方がないことである。このようなトイレに、底の薄い履物やスニーカーなどの布製の靴で入れば、足まで濡れてしまう。
次に欧米の国々の洋式トイレについてであるが、便座に素肌を触れて腰掛ける訳であるから、あまり気持ちいいものではない。他人がむき出しの素肌を触れて使ったことを考えると、何か使い捨ての紙の便座カバーでもあれば良いだろうが、そういうものは欧米の一般のトイレでは見かけたことがない。
日本では、一部の洋式トイレでは、便座の消毒液や紙の使い捨て便座カバーを備えている場合がある。しかし、欧米の洋式トイレでそこまで丁寧に衛生管理を徹底しているトイレは少ないだろう。
しかし、日本人が良く利用するような有名ブランド商品などを売る店や高級ホテルのトイレには、そういうものが特別にしつらえてある場合があるのかも知れない。
また、トイレット・ペーパーについてであるが、日本では、トイレット・ペーパーと言い、ひと巻きで直径が12~3センチメートルのロールである。しかし、欧米では、多人数か使うトイレのペーパーは、一般にトイレット・ロールと言い、ひと巻きの直径が50センチメートル前後の大判である。ペーパーを引き出すと、紙でできたドラムがガラガラと回転しているように見える。ロール全体がガラガラと回りながら、ペーパーが出てくるのである。
このトイレット・ペーパーの様式一つをとっても、日本文化の繊細さと、欧米文化の大胆さという文化の様相の違いが出ているように思う。
米国の有名観光地、グランドキャニヨン国立公園では、コロラド河が流れる谷底へ下るトレイルに幾つかの公衆便所がある。その洋式トイレの一つに入った時のことであるが、そのあまりの汚さに驚いたことがある。尾籠(びろう)な話ではあるが、洋式便器の内と外に汚物がこぼれて、流れずに溜まっていたのだ。しかし、急を要する用足しの場合には、あれこれ言っていられないので、仕方なしにそれを利用したが、凄く後味が悪かった。
これらを考えただけでも、日本のトイレは、和式、洋式にかかわらず、快適で衛生的に思える。日本の場合には、行政も国民も、公衆衛生についての意識が高いように感じるのだ。これがトイレの衛生管理にも生かされている。
すべての世界を隈なく歩いた訳ではないが、世界各国の公衆便所の中で、日本のものが一番きれいではないかと思うのだ。一般に、よく掃除が行き届いていて、管理が良い。一部の山間地の公園などでは、掃除の手が行き届いていない場合があるが、押しなべてよく管理されていると思う。
臭い話ばかりを続けてきた。この辺で話題を変えたいと思う。次の項からの異文化の様相(2)は、堅い話ではあるが、公衆道徳についてである。
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