異文化の様相(1) 公衆便所・その4
日本を除く東アジアの国々には、前の項に述べたような便所の遠回し表現があるのかどうかは知らない。台湾では、確か道路沿いの公衆便所に「厠處」と表示されていたように記憶している。ここのトイレでは使用料は無料であった。
ところで、「厠處」の漢字「厠」は、日本語の訓読みでは「かわや」と読む。そして、「厠」とは、川の上に掛けて作った屋の意で大小便をする所、と広辞苑にはある。昔は、川の上で用を足していたのであろう。また、「處」とは、日本語の漢字の「処」の旧字体で、「所」の意味であるから、解り易い。
余談だが、そのトイレの外側には、洗面台が並んでいて、確か「盥場」などと表現されていた様に記憶している。「盥」とは、日本語では「たらい」のことであり、洗い桶のことである。つまり、洗面器も「たらい」と言うのだ。現在の台湾で使われている漢字は、日本語の旧字体の漢字が多く、日本人には解り易い。これは、中国で現在使われている簡体漢字が解り難くなったのとは、対照的だ。
韓国では、トイレのことを「ファジャンシリ」という。韓国語を知らなくても、大概の観光地の売店などで、“Excuse me, but where is a ファジャンシリ?” のように、英語韓国語混淆(こんこう)で訊(き)くとトイレを教えてもらえる。韓国でも観光地の公衆便所の使用は一般に無料のようだ。
そして、韓国の人たちは一般に、道を尋ねたり、物について質問したりした場合に、大変丁寧に応対してくれる。特に慶州や釜山などの地方都市の人たちが親切だ。道を訊くと、わざわざ先導して教えてくれる程だ。これには、大変かしこまってしまう。「コーマスプニダ」と思わず声が出てしまう。
中国でも、観光地の公衆便所は無料であった。ただし、中国の便所は、大便器を囲う壁はあるものの、その扉(とびら)の上下が開いていて、用を足している姿が外から容易に覗(のぞ)かれてしまうのが多いのだ。
そして、その扉は、前が大きく開いていると思ってそちらを注意していると、裏側も開いているという仕様であった。用を足していたAkkii が気が付くと、裏側から現地ガイドがこちらをじっと見つめているという仕儀(しぎ)であった。しまった、お粗末な一物(いちもつ)を見られてしまったか、と思ったものである。文化の違いと言うものは、恐ろしいものである。まさに異文化である。
なお、東アジアの国々である、台湾や韓国や中国、そして日本の公衆便所が、使用料が無料であることが多いと言う事実は、前々項までで述べた東南アジアや欧米の国々での有料トイレの話は、どうやら東アジアの国々だけには汎用化されえないことを示しているようである。
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