民主党は現実路線で国民の安心と安全を
総選挙で自民党に圧勝した民主党は、国会における議席として、衆議院では安定的多数を占めてはいるが、参議院では単独では過半数を占めていない。したがって、今後の国会運営は、今まで野党であった共産党や社民党、国民新党などの意見にも配慮していく必要があるであろう。
しかし、民主党は、各党の意見が整わないからと言って、安全保障政策をないがしろにしてはならない。民主党は責任ある政党として、現実に即して行動しなければならない。国民の安心・安全のためには、国防力も必要だ。これは、世界各国の警察に武器を持たない警察が無いように、現実には自国の国防のために武器を持たないで安全を維持できることは、考えられないからである。これには外交史や国際関係論などからの知見が必要である。
現在は、国際社会を安泰にするための国際警察というものは無いのだ。これは武力抗争を伴う国際紛争が多発している現状を見れば分かるが、国際紛争には国連も十分には機能していないのである。昨今、どのような紛争が世界各地で起きているかは、『図解「世界の紛争地図」の読み方』(中村恭一・監修/造事務所・編著、2006年12月、PHP文庫)に詳しい。
現在の東アジアでは、中国も北朝鮮も核武装している。つまり、日本は、核兵器を武器とする軍事国家に取り囲まれているのだ。したがって、日本には、国防力としては、現状では核の抑止力として、核の傘も必要だろう。つまり、現時点の日本には、米国の軍事同盟国として、国防力の補完関係は必要な選択なのである。(しかし、米軍は北朝鮮の弾道ミサイル発射の情報や中国の原子力潜水艦の日本領海侵犯の情報を得ていながら、日本側に積極的に情報を提供しなかったことがある。中国の原潜の日本領海侵犯では、やすやすとこれを長時間に渡り行わせて、見逃す結果となっている。)
しかし、今後は日本も、独自の国防力の保持に努力する必要があるであろう。日本が有事の際には、いつでも米国が日本を守ってくれると考えるのは、間違いであり、危険だ。今までの世界史をみても、そんな行動をする国家はなかった。また、米国の同盟国であるからと言っても、同国から輸入している航空機のコントロール装置やコンピュータの基本ソフトが、ブラックボックスで提供されているなどの不都合は、排除していく必要があるのだ。
また、これには、航空機やコンピュータのシステムやプログラムも、日本の国家的プロジェクトとして、政府が政策誘導し、独自路線で開発し、製造することが急務であろう。日本の国防力には、日本の技術力と工業力を十分に活用すべきなのである。
米国に依存している日本の安全保障としての防衛力は、日本にはコスト的に負担が少ないと喧伝している向きもあるが、只ほど高いものはないのである。そして、総合的に米国依存の安全保障のコストを計算すれば、日本が独自に装備と人員を整えた方が、はるかに安く上がるはずである。米国も無償で日本に安全を提供するほど、お人好しではない。
なお、日本が、独自の国防力のため、防衛装備を揃えるためには、自国の産業を育成する必要があるであろう。航空機産業や宇宙産業などの育成だ。そして、そのためには、産業界の経済活動を活性化させるため、武器輸出三原則などの見直しも必要となるであろう。
そして、自衛隊の指揮・コントロールの機能を在日米軍と共有するなどの、国家としての自己防衛機能を無視したような方策は、早急に改める必要があるのだ。人体に例えれば、個体において免疫機能を他人と共有するなどはないのだ。自己防衛機能は、他人とは相容れないからだ。この構図は国家も同様である。
しかし、米国は、おいそれとは日本側の主張を認めないであろう。そして、米国との交渉には、いろいろな機関やチャンネルを使った働きかけや交渉が必要となるだろう。なぜならば、米国の日本における米軍の基地機能は、米国の安全保障やその他の利害とも密接に関係しているからだ。そこには粘り強い交渉が必要だ。
国際社会における正当防衛や緊急避難にも、その行為を行うには、独自の防衛力が必要なのだ。正当防衛や緊急避難の権利は、自然人にも当然備わる権利であるが、国家にも当然認められる。安全保障政策では、理想論に走ることなく、現実路線で国民の安心と安全を確保してもらいたい。
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