冤罪事件とメディアの報道
「冤罪」という難しい漢字は「えんざい」と読む。この意味は、「無実の罪」、「ぬれぎぬ」のことである(広辞苑)。そして、WEB検索で「冤罪 足利事件(あしかかじけん)」とキーワードを入れて検索すると「足利事件」の真相に関する記事が沢山出てくる。その中でも、「しんぶん赤旗」の昨年6月11日号が分かり易いので、参考にすることをお薦めする。そこには「取調室で何が 髪引っ張り足けり 自白迫られた13時間」とエキサイティングな見出しが出てくる。
この「足利事件」は、DNA鑑定という科学的証拠に名を借りて、無辜(むこ)の人間に幼女殺害の罪をでっち上げたものである。この冤罪によって、警察や検察の取り調べのための勾留などや無期懲役刑の確定によって、17年半も拘束されていた菅家利和さん(現在63歳)が、昨年6月に収監先の刑務所から釈放された。新しいDNA鑑定技術によって、冤罪であることが分かったからである。
また、同じく「冤罪事件」とされるものに2003年に鹿児島県志布志町で起きた選挙違反罪事件がある。これは、警察、検察ともに取り調べで自白を強要し、地元で尊敬されていた簡易郵便局長を含む13名を冤罪で起訴したものである。この事件は、2007年2月に無罪判決が確定した。この事件では、無実の罪で逮捕された大勢の人たちに長期間の勾留を強いて、内1人には、1年以上もの長期間に渡り、勾留した。この事件は「志布志事件(しぶしじけん)」と呼ばれている。詳細は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』にも掲載されている。この事件での自白を強要する取調べの状況は、誠におどろおどろしい。
このような冤罪事件は、なぜ起きるのであろうか。それには、警察や検察の自白偏執主義があるからである。そしてもう一つ、その発生に大きな影響を与えるものに警察や検察がするリークがあると考えられる。これは、メディアに向けられたリークである。そして、これがニュースとなり、さも、容疑者や被告人が犯罪者であるかのような錯覚を社会に与えるのである。その結果、これが取調べや判決にハレーションを起こし、反映されてしまうと考えられるのだ。
しかし、このような警察や検察からのリークは、日本国憲法上も、刑事法上も許されるものではないだろう。たとえ被告人とされても、裁判で刑が確定するまでは、「推定無罪」であるからだ。特に志布志事件は、政治がらみの事件であった。政敵側から仕組まれたでっち上げ事件であったのだ。この結果、被疑者とされた無実の人たちが、長期間に渡り、自由を奪われ勾留されたばかりではなく、政治活動からも遠ざけられてしまった。
今、メディアが騒がしい民主党幹事長の小沢一郎氏に向けられた政治資金規正法違反の問題も、東京地検からのリークがすさまじいようだ。現職衆議院議員を含む3名も逮捕して、勾留している。そして、未決であるにもかかわらず、さも、犯罪事実が確定したかのようなメディアの報道が相次いでいる。これは、あまりにも政治的過ぎるのではないだろうか。これでは、せっかく政権を交代した与党民主党を疲弊させ、重要な国会審議に甚大な影響を与えかねない。また、国民の政治不信も大きく煽る。
このような不公正とも考えられる司法当局からのリークは、いかがなものであろうか。これは、厳禁すべきであろう。また、政府は、そのリークしている人物を特定し、きちんと対処すべきであろう。なぜならば、それは日本国憲法や刑事訴訟法、国家公務員法にも違反し、公務員の倫理規則にも著しく反する許し難い行為であると考えるからだ。また、メディアも、被疑事実が未決であることを考え、行過ぎたニュース報道は控えるべきであろう。
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コメント
法律には詳しくないのですが、小沢幹事長に対する西松建設ガラミの報道は昨年3月からなので、実に長い間、牛のヨダレのようにダラダラと続いてきたが、ここにきて一段と激しくなり、まるで犯罪者扱いである。
日本のマスメディアは地検情報をタレ流しで、これでは地検が日本を動かすことになる。
戦時中軍による大本営放送を聞きながら育った世代なので、戦闘に負けたのに勝ったと逆の放送をし続け、ついには本土空襲まで受けたが、それでも敵を引き寄せて全滅させる作戦といった。
今は地検がその役割をになうかと思った。
しかし、ひとつだけ違うのはインターネットで市民が生の声を発することができるからです。
投稿: 桜 | 2010年1月25日 (月) 01時21分