海外ロングステイを薦めるNPO標榜の似非ボランティア団体
あるNPO法人を標榜する団体で、海外ロングステイを薦める会の定例会に参加したことがある。このとき、始めに驚いたのは、役員として顔を連ね、また、会員として活躍している面々に、元不動産業者が多いように思えたことだ。ここには彼らが、南国暮らしなどを会員に薦め、会を利益を得るための集客の窓口としてNPO法人を運営して懸念がある。それは不動産業であったり、旅行業であったりするのだろう。
日本では、不動産取引には宅地建物取引業法(略して宅建業法)といわれる強行法規が適用され、また、旅行の申し込みには、旅行業法が適用され、一般消費者は保護されている。ところが、海外の取引では原則として、たとえ日本人同士が相手の取引でも、これらが適用されないのだ。
したがって、海外ロングステイを目指している場合には、悪徳不動産業者や暴利を貪ろうとしている海外コミュニティーなどの顔役の餌食にならないように、細心の注意が必要だ。特に、日本を出発する際に住居を他人に賃貸して出かけてしまうなどの愚は、避けた方が良いだろう。それは、海外渡航先の現地状況が見えてきたときに、カルチャーショックなどで日本に戻ろうとする場合の障害となるからだ。
また、海外の地では、知り合いがいないことなどから、現地の日本人コミュニティーに頼ることになるが、このときに不動産取引や投資話などの勧誘に膨大な時間で接することになり、結果としてこれらの詐欺の被害者になる危険性が高まるからである。お食事会やゴルフなどに誘われて親しくなるうちに、その罠に嵌っていくのである。「只ほど高いものは無い」とは、昔から言い伝えられる警句である。
つまり、海外ロングステイに出かける場合には、日本での住まいは確保しながら、いつでも日本に引き上げられるようにして出かける方がベターであるということである。ところが、ロングステイを薦める団体などは、日本での住居を整理して、他人に貸し与えるか、売却することを薦める場合がある。この勧誘に乗って、海外ロングステイを始めた場合には、その詐欺被害の餌食になる確率が高まるのである。
また、現地の気候や社会や文化に適応できないのに、無理してそこでの生活を続けることは、うつ状態などの適応障害にまで発展する恐れが出てくる。このような場合には、すぐに日本に帰国することが最良の対処法であるが、日本に住居が無いことがこの妨げになる場合があるのだ。
特に夫婦などのカップルで出かけた場合には、一方が適応できても、他方が適応できないことが多い。特に女性の場合には、周りに話し相手が少ないことや、楽しめるテレビ番組もないことなどから、現地の生活に馴染めない場合が多いのだ。ここには、似非(えせ)ボランティア団体の口車には乗せられないようにする用意周到さが必要だ。
マレーシアのMM2H(マレーシア・マイ・セカンドライフ・ビザ)などのビサを取得し、5年間や10年間のロングステイを目指すならば、その助走期間ないしはテスト期間を設けて、現地の文化や社会や気候などに自らが順応できるかどうかを、観光目的のビザのいらない期間内で現地に滞在し、確かめてみることをお薦めする。これには、ロングステイを薦める団体や旅行会社などから離れて、できるだけ客観的な目で自らが確かめてみることが必要なのだ。
最近では、日本人がパックツアーなどでよく泊まるホテルなどでも、ロングステイヤー向けの宿泊サービスを提供している有名ホテルも多くなった。長期契約では、宿泊料も割安だ。それらは、キチネット(台所セット)に電子レンジや冷蔵庫まで揃えて提供してくれている。そして、マレーシアでは6ヵ月間、タイでは90日間(約3ヶ月)を、観光目的であれば滞在期間の途中で一度、他国に出国するなどして、長期間をビザ無しで滞在できる方法があるのだ。超長期のロングステイには、是非、助走期間を設けてみることをお薦めする。
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