普天間基地問題と日本の安全保障
民主党を中心とする与党政権は、自公政権の施策の後始末に苦労するであろう。その典型的事例は、沖縄の普天間基地問題だ。米国側は、既に日本との合意があったと主張しているが、それは、あくまでも下野した自民党と公明党との連立政権のもとでだ。
鳩山首相は、米国の言いなりになるべきではない。現在、日本に米軍基地や米軍施設が合計で134箇所もあるとされているのだ。狭い日本にそんなに米軍基地や施設はいらないのではないか。
そうであれば、沖縄の普天間基地の代替基地は、どこの自治体も引き受けてくれないということを強調し、アメリカには、この際ご遠慮頂いてはどうだろうか。つまり、アメリカに在日米軍基地の撤退を迫るのである。
しかし、アメリカは、これには相当の抵抗を示すであろう。マッチポンプによる世論工作もしてくるだろう。これは、民主党政権を転覆するくらいの相当な圧力となるのは間違いない。これには民主党を中心とする与党政権は、相当用意周到に、細心の注意を払わなくてはならないだろう。
それは、日本列島が、アメリカの世界戦略の重要な基地であり、特に沖縄は、米国の失業対策の大きな部分を担う兵士という職業の働く場を提供する重要な地域であるからだ。これは、極寒の地、北海道ではなしえない兵士の労働の場なのだ。それは南国のリゾート地にもなりえる、温暖な沖縄であるからだ。米軍の兵士にとっては、沖縄はパラダイスであろう。
しかし、日本は、自国民に犠牲や忍従を強いて、そこまでアメリカに貢献する必要はないだろう。アメリカの失業対策に貢献する必要はない。
かつて、アジアでも、米軍基地を撤退させた国が2つあった。フィリピンと韓国である。どちらの国にも、その後、他国から領土を侵害されたという事実はない。そのうち、韓国はその後、再度米軍を引き入れた。北朝鮮との緊張関係があるからだ。(しかし、この緊張関係も米国側が仕組んだマッチポンプである疑念もある。北朝鮮を孤立させて、東アジアに日本や韓国に共通する「敵国」を作出させた感がある。)
ところが、日本は、数年前から、東シナ海の日本側EEZライン付近を中国の天然ガス掘削により、実効支配されている。実質的な領土、領海侵害だ。これに対して、米国には、日本に加勢したり、日本の権益を擁護したりしようとする動きはない。米国は、ダンマリを決め込んでいるのだ。
現在、狭い日本に米軍基地や米軍施設が合計で134箇所もあるのは、第二次世界大戦が終結して、GHQの占領が終了した後も、日本は米国の意のままにそれらを延々と存続させてきた結果だ。1951年にサンフランシスコ平和条約(講和条約)が締結された後、既に59年も経っているのに、米軍基地や施設は縮小どころか、拡張に向かっているかのようだ。
米軍の日本駐留は、日本にとって軍備にかける予算が少なくて済むというような論理に裏付けられていた。また、有事の際にアメリカがいつでも日本を守ってくれるだろう、というような希望的観測に裏付けられていた。核の傘のもとに入り、安全が担保されているというような論理である。
しかし、外交機密文書が明らかになってきて、その経済的損得勘定の根拠が覆っている。また、有事の際に、アメリカはいつでも日本を守ってくれるものではないということが、去年の北朝鮮の試射ミサイル日本上空通過の際の米国側の対応や米軍高官の言動により、明らかになった。
日本政府は、米国との密約により、日本国民には知らせないままで、膨大な資金提供を米国側に行っていた事実が明らかになったのだ。また、核密約により、非核3原則は骨抜きになっていた事実が明らかになったのだ。核兵器の保持とそれによる威嚇については、日本は米国軍を道具として使っていた間接正犯であったということだ。これでは、日本が核武装しているのと全く違うところがない。
「只ほど高いものはない」とは、過去から言い伝えられる警句である。米国も、只で日本の安全保障を補ってくれるほどお人好しではない。外交関係には、必ず利害損得の計算が働いているのは、国際社会の常識である。
戦後65年も経過しようとしている今年は、普天間基地問題を契機として日本の安全保障を再構築するチャンスであろう。それは、日本独自の国防装備を整え、日本国内に合計で134箇所もあるとされる米軍基地や米軍施設の問題にきちんとけじめをつけるチャンスではないだろうか。米国の顔色ばかり伺って、日本の実質的な安全保障をうやむやにすべきではない。
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