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タイの騒乱とメディアの報道

 日本の旅行会社にとっては頭の痛い問題であろう。年間で日本人旅行者が120万人以上訪れるといわれるタイの首都、バンコクの政情不安による治安の悪化である。これにより、ゴールデン・ウィークを前にタイへの海外旅行を考えていた人たちは、旅行を中止するか、目的地を変更することであろう。

 昨今のタイの騒乱は、元はといえば、2006年9月にタイの議会制民主主義に軍部が軍事クーデーダーを起こして関与したことに起因する。仏教国であり、比較的穏やかなタイ人の気風の中で、シビリアンコントロールを失った軍部が暴走して、タクシン首相を失脚させた。しかしその後、国民の多くが、倒れた政権の復活を願って、総選挙で再度、その政権を選択した。赤いTシャツの群集が応援するタクシン元首相派である。

 ところが、軍部とそのクーデターによって担がれていた現アピシット政権が選挙の結果に従わずに政権維持に固執しているようだ。これを応援しているのが黄色いTシャツの群集である。しかし、多くの国民は議会制民主主義に軍部が関与するのを歓迎していないようだ。

したがって、いずれこの騒乱は終息し、治安も回復するであろう。それからでもタイ旅行は遅くはない。現在、タイの首都、バンコク周辺の騒乱がひどいようであるが、チェンマイやアユタヤなどの地方都市でも騒乱の兆しがあり、爆発事件などが散発的に起きている。

日本政府は、その騒乱に関バンコク周辺の注意情報を出しているが渡航自粛要請は出していない。しかし、シンガポールや韓国、中国が、タイへの不要不急の渡航の自粛要請を出しているから、日本国外務省からそれが出るのも時間の問題であろう。

 しかし、それとは別に、日本国外務省はタイに関しては以前から危険情報を出している地域がある。例えばタイ南部のマレーシアとの国境付近である。それはこの地域がイスラム教徒と仏教徒との対立に起因し、治安が悪化しているからである。

誘拐事件や襲撃、ホテル爆破やレール爆破事件などが散発的に発生し、多くの市民が犠牲になっている。また、タイとカボジア国境付近の両国軍同士の散発的な銃撃戦でも危険情報を出している。

 ところが、タイへの海外旅行者が減ると困る日本の旅行会社の意向を汲んでなのか、Fテレビでは、今日午前のニュース解説番組の中で、一ツ橋大学の教授に語らせる方法で、タイ国内では、バンコクの一部の騒乱地域以外は安全であるかのような報道をしている。

しかし、これは事実に反する。前述の危険情報のほか、今回の騒乱事件により、タイ国政府により、バンコク都内全域を含む多くの地域に非常事態宣言が発令されているのだ。これでは、Fテレビのメディアとしての報道の公正性が疑われる。

 タイの騒乱が長引けば、2008年11月のバンコクの国際空港閉鎖の悪夢が再現される恐れすらある。このときは数週間に渡り、タイ出国ができなくなった外国人旅行者が大勢いて、路頭に迷った。この辺のリスク情報は、報道機関は、きちんと伝える責務があるだろう。Fテレビの報道姿勢には、メディアの報道には眉唾(マユツバ)ものが交じっているということを再確認させられた。

 現在のタイの渡航情報は、新しい電子記録方式を取り入れているパスポートに掲載の外務省の海外安全ホームペーにアクセスし、調べることができる。旅行者は、旅行会社やメディアの情報に惑わされることなく、自らの自覚と責任で、海外の治安情報や危険情報を調べておく必要がある。そして、常に最新の情報にアクセスする努力が必要だろう。

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