朝市の長い行列
海外旅行に出かけると、好奇心の旺盛さから何でも見てやろうという気持ちが湧く。マレーシアはペナン島のタンジュンブンガの朝市でのことであった。マーケットの一角に鍋やタッパなどの器を携えた人の長い行列ができていた。
見ると牛乳を濃くしたような乳白色の液体を売っていた。計量舛で計りながら売っているのだ。中には器を持たない人もいて、ビニールの小袋にその液体を入れてもらって買っている。
人の行列の長さから見ると人気の食品なのであろう。乳白色の液体は美味そうに見えた。何を売っているのか並んでいる人に尋ねてみた。すると、ココナッツミルクを売っているのだという。
ココナッツミルクとはどんな味がするのだろう。飲んでみたくなった。そこでその行列の最後尾に並んだ。時間が経過し、段々売り場に近づき、もう直ぐ順番が回ってくるところで店員から英語で声を掛けられた。このココナッツミルクは、生では食べられない。加熱調理用のものだが、それでも買うか、ということであった。
唖然として、生では飲めないのかと再確認し、それなら要らないと断って、皆の同情の眼差しを浴びながら列を離れた。列には地元のロングステイヤーも沢山並んでいたことであろう。日本人もいたはずだ。
このタンジュンブンガ付近には、ロングステイヤーが数多く滞在する日本のマンション風のコンドミニアムが多い。ロングステイするには、ジョージタウンの中心部や、バタワースへのフェリー乗り場ジェッティーからのエアコン付きのバスの便も多く、住みやすい地域なのであろう。首都のクアラルンプールより、ペナン島の方が概して涼しいようだ。周囲が海に囲まれているからであろう。
多民族国家のマレーシアは、全国的にみればマレー系の国民がドミナント勢力で過半数を占めるが、ペナン島にはマレー系やインド系よりも華人系の人口が多いのだ。華人系は日本人とよく似ているので、一見では区別がつかないことが多い。
ペナン熱帯植物園側から登るペナンヒルでは、華人系がエクスサイズとして、ハイキングしている光景に接することができる。日本人とよく似ているので親近感が湧く。華人系は英語教育に熱心なので、大概英語が話せる。片言の英語でも楽しい会話ができるだろう。
タンジュンブンガの朝市は旅行者にも人気のスポットだ。ここでココナツミルクを生で飲めるものと思って買おうとする旅行者が多いのだろう。生で飲んだら、下痢などの食中毒症状を呈することになったであろう。クワバラ クワバラだ。過去にそういう事例が多かったのかも知れない。
このタンジュンブンガの朝市は、タンジュンブンガ行きのバスの終点を経て、バスが坂を上がって左側の回転する広場に移動した直ぐ先にある。バスのドライバーに市場に行きたい旨を告げて頼めば、バスの回転場所まで乗せてもらえるだろう。
市場には、その国の庶民の食物が並んでいる。ここではフード・コートも併設されている。ここに行けば、その食文化が良く分かる。南国でありながら、屋内で売られているとはいえ、生の魚が氷漬けにもされず、冷蔵庫や冷蔵ケースに入れることもなく、売られているのには驚かされる。これと同じような光景は、韓国のソウルの南大門市場や、プサンのチャガルチ市場の付近の炎天下の路上にも繰り広げられており、驚いたことがある。
海外旅行では、パックツアーと言われるパッケージ・ツアーでは案内されない、庶民の生活の場に入って、観光してみるのも楽しい。そこでは、色々な民族の生活の態様と文化に触れることができるからだ。
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