師走と雪形
「今日から師走(しわす)」と新聞やテレビで報じられたのは、一昨日だ。師走も今日で3日になってしまった。これからは、「あと幾つ寝るとお正月」となっていくのだろうか。
陰暦の月の呼び方として、12月が師走とされるのには、特別な意味を感じる。師走の語源は、定かではないが、師匠のお坊さんも走り回るほどの忙しい月であるという説がある。陰暦の月の呼び方やその由来をあまり知らなくても、師走が12月であるのは一般に知られていることであろう。1月の睦月(むつき)からはじまった1年も、12月の師走で終わる。
「むきやうさ、みふはなかしし」。これは、古文の学習で陰暦の月の名前を覚えるのに使った語呂だ。なんとなく意味がありそうな響きであるが、格別な意味は無い。しかし、覚えやすくて便利だ。これは、睦月(むつき)、如月(きさらぎ)、弥生(やよい)、卯月(うづき)、皐月(さつき)、水無月(みなづき)、文月(ふみづき)、葉月(はづき)、長月(ながつき)、神無月(かんなづき)、霜月(しもつき)、師走(しわす)の読みの頭1文字を並べたものだ。最後の「しし」と「し」が二つ連なるのは、最後が「師走」であるから、その前は「霜月」となるので、何らの混乱はないだろう。
陰暦の月の名前は、受験のためにだけではなく、教養として覚えておくと便利だ。これは、博物館や記念館などなどを訪ねると、よく「古文書」に接する機会があるからである。これを知っていれば、古文書に「文月廿日」とあれば、旧暦の7月20日であることが分かる。(※「古文書」の読みは「こもんじょ」であり、「こぶんしょ」と読むのは間違いであるので注意。「公文書(こうぶんしょ)」の読み方につられないように!)
ところで、陰暦とは太陰暦ともいう。この暦は、月の動きを基準としていたため、太陽暦とは違って、月の名前と季節にずれが生じた。閏月(うるうづき)があると、1年が13箇月であることもあった。そこで、陰暦が示す季節的な移ろいを補完するものとして二十四節気が編み出された。
しかし、陰暦と同様に中国から輸入された二十四節気も中国での事象を基にしていたため、日本ではストレートには馴染まなかった。そこで、その不便さを解消するために日本独自の「雑節」が編み出されたという。「雑節」とは、八十八夜(はちじゅうはちや)や半夏生(はんげしょう)や二百十日(にひゃくとうか)などである。『茶摘(ちゃつみ』の歌にある「夏も近づく八十八夜」は有名である。この八十八夜は、野にも山にも若葉が茂る頃合いだ。
独自の農耕文化を育んできた日本では、各地で農事暦が作られたり、農歳時記が書かれたり、また、山腹の雪形(ゆきがた)を見たりして、農作業の頃合いを見計らってきたという。これらに関し、各地に伝わる「雪形」を調べたり、雑節などと農事との関連などを調べたりして、研究してみるのも面白いだろう。
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